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大阪地方裁判所 平成3年(ワ)700号 判決 1991年12月10日

原告

上間福康

ほか一名

被告

島田徹也

主文

一  被告は、原告上間福康及び同上間幸子に対し、各二〇〇万一九六二円、及び右各金員に対する平成元年五月三日から支払い済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを八分し、その七を原告らの、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告らに対し、各一六〇七万〇八七九円、及び右各金員に対する平成元年五月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

次の交通事故が発生した(以下、「本件事故」という。)。

(一) 日時 平成元年五月三日 午後一一時二五分ころ

(二) 場所 大阪市西淀川区御弊島五丁目一七番一三号先路上(府道大阪池田線、加島跨線橋上、以下、「本件事故現場」という。)

(三) 加害車両 普通乗用自動車(登録番号、なにわ五六て三九二四号、以下、「被告車」という。)

右運転者 被告

(四) 被害車両 原動機付自転車(登録番号、大阪市西淀う一四〇四号、以下、「原告車」という。)

右運転者 訴外上間康治(以下、「康治」という。)

(五) 態様 康治は、原告車を運転中、本件事故現場付近において運転を誤り転倒し、被告車の走行車線上に横臥していたところを、被告運転の被告車に轢過された。

(六) 結果 康治は、本件事故により、脳挫傷・骨盤骨折等の傷害を負い、事故から一二日後の五月一四日に死亡した。

2  責任原因

被告は、被告車を運転中、康治が路上に横臥している状態を約五九・七メートル手前で発見することが可能であり、かつ事故の発生に気付いた訴外中野圭祐運転手が対向車線上からクラクシヨンを鳴らして被告に前方の注意を喚起したのを衝突地点の約三二メートル手前で聞きながら、自車の進路前方の安全確認を怠り、軽くブレーキを踏んだだけで漫然と時速約五〇キロメートルの速度で進行した過失により、自車を康治に衝突させて同人を車体下部に巻き込み、その状態で約九・九メートル引きずり傷害を与え死亡させたものであるから、民法七〇九条に基づき本件事故によつて原告らに生じた損害を賠償する責任がある。

3  損害

(一) 康治の損害と相続

(1) 治療費 三七万三二五五円

(2) 入院雑費 一万五六〇〇円

一日当たり一三〇〇円の割合による入院期間一二日分

(3) 入院付添費 五万四〇〇〇円

(4) 逸失利益 三一二六万二一二五円

康治は、本件事故当時、一七才四ケ月の健康な男子であり、生存しておれば四年生大学かもしくはそれに準ずる専門学校に学んでいたはずであるから、一八才から六七才までの四九年間にわたり、少なくとも昭和六三年度賃金センサス第一巻第一表・産業計・企業規摸計・新大卒・二〇ないし二四才の男子労働者の平均年収額程度の収入を得ることができたはずであつたところ、同人の生活費は収入の五割とするのが相当であるからこれを控除し、ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して同人の逸失利益の現価を計算すると、三一二六万二一二五円となる。

(算式)

2,632,600×(1-0.5)×(24.702-0.952)=31,262,125

(5) 相続

原告上間福康(以下、「原告福康」という。)は康治の父であり、同上間幸子(以下、「原告幸子」という。)は母であり、原告らの他に相続人はいないから、原告らは康治の被告に対する前記損害賠償請求権を法定相続分である二分の一の割合に応じてそれぞれ相続した。

(二) 原告らの固有の損害

(1) 慰謝料 二五〇〇万〇〇〇〇円

本件事故によつて子を失つた原告らの精神的苦痛を慰謝するための金額としては、各一二五〇万円が相当である。

(2) 葬儀費用 八〇万〇〇〇〇円

原告らは、康治の葬儀を執り行い、その費用として各四〇万円を支出した。

(3) 弁護士費用 二三七万〇〇〇〇円

原告らは、原告ら訴訟代理人弁護士に、本訴提起の費用及び報酬として各一一八万五〇〇〇円を支払うことを約束した。

(三) まとめ(損害合計額) 五九八七万四九八〇円

(各二九九三万七四九〇円)

4  損害の填補

原告らは、自賠責保険から合計一七五〇万円の支払いを受けたから、各八七五万円を前記各損害額に充当した。

5  結論

よつて、原告らは、被告に対し、前記損害額から前記填補額を差し引いた残額各二一一八万七四九〇円の内金として、各一六〇七万〇八七九円及び右各金員に対する不法行為の日である平成元年五月三日から支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実はすべて認める。

2  同2の事実は争う。

3  同3の事実は争う。

4  同4の事実は認める。

三  抗弁

1  過失相殺

本件事故は、康治が運転を誤つて転倒し、中央分離帯を越えて対向車線上に横臥していたところを、被告が被告車でもつて轢過したものであるから、被告には過失はなく免責されるべきであるが、仮にあるとしても、康治の過失は大きいから大幅な過失相殺がなされるべきである。

ちなみに、本件は自賠責保険においても重過失事案として三〇パーセントの過失相殺がなされており、また被告の刑事処分も不起訴となつている。

2  損益相殺

原告らは、被告から康治の治療費として三七万三二五五円の、自賠責保険から死亡保険金として一七五〇万円の合計一七八七万三二五五円の各支払いを受けた。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実は否認する。

被告は、康治が転倒している状態を約五九・七メートル手前で視認可能であつたから、被告車の速度が被告本人が供述するように時速五〇キロメートルであれば停止距離が約二五メートルであるので、その時点で進路を変更するか、ブレーキ操作でもつて停止して本件事故を回避することが十分に可能であつた。にもかかわらず、被告に康治を轢過したことの認識がないのは、脇見運転をしたか、或いは時速九〇キロメートルの異常な高速で走行し、進路前方の障害物の識別能力(動態視力)を低下させた可能性が大きい。

2  同2の事実は認める。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  本件事故の発生

請求原因1の事実は、いずれも当事者間に争いがない。

二  次に、被告の不法行為責任の有無につき判断する。

成立につき争いのない甲第一、第二号証、及び被告本人尋問の結果(但し、後記の採用しない部分は除く。)、並びに弁論の全趣旨を総合すると以下の事実が認められ、被告本人尋問の結果中の右認定に反する部分は前掲各証拠に照らして採用しえず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

1  本件事故現場の状況は、概略別紙図面のとおりで、中央を中央分離帯(別紙中央分離帯断面図どおり、幅約〇・四メートル、高さ約〇・一五メートル)によつて区分された片側二車線(一車線の幅員はいずれも約三・一メートルである。)の、市街地にあるアスフアルト舗装された南北に走る直線道路であり、北から南へ向かつて一〇〇分の三の下り勾配になつており、本件事故当時の天候は晴れで路面は乾燥しており、前方の見通しは良く、最高速度は規制されておらず、現場付近の明暗については、高速道路の陰になるものの康治が横臥していた同図面の<ア>の地点から約六・九メートルの地点に水銀灯があるのでやや明るい状態であり、現場付近の実況見分時(平成元年五月四日午前〇時から同日午前二時まで)の交通量は一分間に一五台であつた。

別紙図面に記載のとおり、右道路の南行車線の内側車線上に、被告車が康治を引きずつた際路面に付いた引きずり痕が約九・九メートル認められ、その付近路面には繊維及び肉片が付着していた。

被告車のブレーキ痕は、北から南へ向かって、右前輪につき約一三・二メートル、左前輪につき約一五・〇メートル印象されてあつた。

又、同道路の北行車線の内側車線上から中央分離帯にかけて、南から北へ向かつて、約三・五メートル、約一・〇メートル、約二・五メートルの三条の路面擦過痕が不連続に印象されており、右約二・五メートルの擦過痕の前(北)方地点に被告車が転倒していた。

本件事故は、南北道路の南行車線の内側車線上で発生した。

2  被告は、被告車を運転し、南北道路の南行車線のうち内側車線を時速五〇キロメートルないし六〇キロメートルの速度で南進し、本件事故現場である別紙図面記載の<1>の地点にさしかかつたとき、対面信号が赤を表示しているのを見て若干減速をし、<1>の地点から約八・〇メートル進行した同図面<2>の地点に進行したとき、対向・北行車線上の<ウ>の地点に転倒している原告車の尾灯を認め、それと同時位にクラクシヨンの吹鳴音(事故後、警察の捜査により判明したところによれば、訴外中野圭祐が吹鳴したものである。)を聞いたので、軽くブレーキを踏みながら<2>の地点から約二四・一メートル進行した同図面<3>の地点に達したとき、同図面<ア>の地点に横臥していた康治と衝突し、同人を轢過してそのまま被告車の車体下に巻き込んで約九・九メートル引きずつたにもかかわらず、そのときまだ被告は康治を轢過したことに気付いてはおらず、前記<3>の地点辺りで車体が滑りハンドルが取られた状態になつたので、危険を感じ停止しようとして強くブレーキを踏み込んだところ、前記<3>の地点から約三〇・一メートル進行した同図面<4>の地点において中央分離帯に乗り上げて停止した。

そして、事故当時、被告車は事故現場まで先頭を走行しており、進路前方に先行車や信号待ち停止車両等走行や見通しを妨げる障害物はなかつた。

3  被告は、事故発生後、警察による現場検証において、前記<3>の地点で<ア>の地点に横臥していた康治を轢過したことを知つた。

さらに、被告はパトカーの助手席に同乗して視認実験を行つたところ、同図面<1>の地点で車両を停止して見たときには、前方約五九・七メートル先の<ア>の地点に頭部を東西に向け道路と平行に横臥していた被害者役の警察官を発見することができた。しかしながら本件では、康治は頭部を北に向け道路と垂直の状態にあり、走行中の車中から視認するのであるから、右実験より幾分発見しにくい状態であつたことが認められる。

尚、被告の刑事処分は不起訴処分であつた。

4  他方、康治は、原告車を運転して南北道路・北行車線のうち内側車線を北進し、本件事故現場付近にさしかかつたところ、別紙図面記載の長さ約三・五メートルの擦過痕の南端部辺りで車体の右側を下にして転倒し、さらに原告車は中央分離帯に乗り上げたのち、同図面<ウ>の地点に停止したが、康治は原告車から投げ出されて対向・南行車線の内側車線上の同図面<ア>の地点に転倒し、頭部を北に向けて横臥していたところを前記のとおり被告車に轢過され、引きずられたものである。

5  被告車は、車長約四・一八メートル、車幅約一・六二メートル、車高約一・三三メートルであり、その損傷状況は、フロントエプロン右前角部に擦過痕、フロントアンダーカバーに払拭痕、右前輪シヨルダー部に擦過痕が認められ、又、車体下部のエプロン部、エンジンメンバー部、ミツシヨン中央部、ミツシヨンメンバー部等には康治を轢過し引きずつたとき付いた払拭痕が認められ、康治の着衣の繊維痕及び肉片等が付着していた。

原告車の損傷状況は、前部泥除け先端部が脱落し、車体の右側、右サイドミラー及び前輪右シヨルダー部に擦過痕が認められた。

尚、原告らは、被告車の速度が時速九〇キロメートル程度の異常な速度で走行して進路前方の障害物の識別能力(動態視力)を低下させた可能性が大である旨主張するので、以下検討する。

前記認定のとおり、被告車左前輪のブレーキ痕は約一五・〇メートルであり、同車右前輪のそれは約一三・二メートルであることから、摩擦係数を〇・七(アスフアルト舗装した乾燥路面の場合)として被告車の速度を算出すると、左前輪が時速約五二・一キロメートル、右前輪が約四八・九キロメートルとなる。

摩擦係数を〇・八に上げて算出すると左前輪が時速約五五・七キロメートル、右前輪が約五二・三キロメートルとなる。

被告車が康治を引きずつたことと、高さ約〇・一五メートルの中央分離帯に乗り上げて停止したことにより被告車の速度が幾分減殺されたであろうことを考慮しても、前記算出の数値からして被告車の速度は被告本人の供述どおり時速約五〇キロメートルであるか、ないしはそれを超過するとしてもせいぜい時速約六〇キロメートル程度であると考えられ、その他法定速度を超過したり、時速約九〇キロメートルもの異常速度を出していたことを認めるに足りる証拠は存しない。

以上の認定事実によれば、本件事故現場は、水銀灯によりやや明るい、見通しのよい下り勾配の直線道路であり、被告車は先頭を走行しており、進路前方に先行車や駐車車両等走行や見通しを妨げる障害物はなく、視認実験によると約五九・七メートルまで視認可能であり、本件の場合は右実験の場合より幾分発見しずらい状態であつたことを勘案しても、少なくとも五〇メートル程度に近ずけば視認可能であつたものと推認することができ、しかも被告は対向車線上に転倒している原告車の尾灯を認め、クラクシヨンによる警告の吹鳴音を聞いているのであるから、被告は現場における異常事態の発生を予測し、進路前方を良く注視してその安全を確認しておれば、前記視認可能な地点辺りで路上に横臥している康治を発見することができたはずであり、さすれば適切なブレーキもしくはハンドル操作でもつて、康治の手前で停止するかあるいは外側車線に避譲するかなどして本件事故を回避することができたにもかかわらず(ちなみに、摩擦係数を〇・七として時速五〇キロメートルで走行中に急制動措置を執つた場合の停止距離は約二五メートルであり、時速六〇キロメートル場合のそれは約三二メートルである。)、若干減速したのみで康治を発見することなく漫然轢過したのであるから被告には前方不注視の重大な過失があつたものというべきであり、したがつて、被告は民法七〇九条に基づき本件事故による損害賠償責任を免れない。

三  そこで、損害について判断する。

1  康治の損害

(一)  治療費 三七万三二五五円

成立に争いのない甲第三ないし第五号証によれば、康治は事故当日の平成元年五月三日から死亡した同月一四日まで一二日間、大阪大学医学部付属病院特殊救急部に入院治療を受け、その間の治療費につき合計三七万三二五五円を要したことが認められる。

(二)  入院雑費 一万五六〇〇円

右入院期間の一二日間に入院雑費として一日当たり一三〇〇円程度の支出をしたものと推認されるから、一万五六〇〇円を相当損害として認める。

(三)  入院付添費 〇円

成立につき争いのない甲第三号証によれば、康治に付添い看護を要する旨の医師の指示はなく、その他全証拠によるも付添看護を要した事実を認めるに足りる証拠はないから、入院付添費を認めることはできない。

(四)  逸失利益 二五八四万五五〇二円

弁論の全趣旨によれば、康治は、昭和四六年九月一六日生れで、事故当時満一七歳の健康な男子であつたから、本件事故に遭遇しなければ、一八歳から六七歳までの四九年間就労可能であり、その間毎年少なくとも平成二年度賃金センサス第一巻第一表・産業計・企業規摸計・学歴計の一八ないし一九歳の男子労働者の平均賃金年額二一七万六五〇〇円程度の収入を得ることができるはずであつたと推認することができ、またその間の康治の生活費は右収入の五割であると認めるのが相当であるから五割を控除することとし、ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息をそれぞれ控除して同人の死亡による逸失利益の現価を計算すると二五八四万五五〇二円となる。

(算式)

2,176,500×(1-0.5)×(24.7019-0.9523)=25,845,502

(五) 慰謝料 一六〇〇万〇〇〇〇円

本件事故により生命を奪われるに至つた康治の精神的苦痛及び子を失つた原告らの精神的打撃を慰謝するための金額としては、一六〇〇万円をもつて相当とする。

(以上の合計金額 四二二三万四三五七円)

(六) 権利の承継

弁論の全趣旨によれば、原告福康は康治の父であり、同幸子は母であり、同人には他に相続人がいないことが認められるから、原告らは、康治の死に伴い前記の損害賠償請求権を法定相続分の各二分の一の割合に応じて、各二一一一万七一七八円を相続により承継取得したことが認められる。

2  原告らの固有の損害

葬儀費用 各四〇万〇〇〇〇円

弁論の全趣旨を総合すれば、原告らが康治の葬儀を執り行いその費用を負担したことが認められるから、各四〇万円をもつて本件事故と相当因果関係にある損害と認める。

3  まとめ

1及び2の合計額 各二一五一万七一七八円

四  過失相殺

前記二で認定した本件事故現場の状況及び事故態様によれば、本件事故の発生原因は被告の初歩的ともいうべき前方不注視の過失によるものであるところ、被告は康治を轢過し、さらに同人を約九・九メートルもひきずつたのちもそれに気づかず、捜査開始後になつてやつと右事実を認識するに至つたなど被告の前方不注視の程度は相当重いものであるが、しかし現場は付近に水銀灯があるとはいえ高速道路の陰になつてやや明るい程度であり、クラクシヨンの吹鳴音は対向車線上の車両から発つせられたものであるし、尾灯の点灯した原告車も対向車線上に転倒していたのであるから、被告車の進路前方それ自体の異常を警告する直接的効果が若干薄れたことも否めないところである。

他方康治の過失につき検討するのに、前記認定のとおり深夜とはいえ相当交通量の多い幹線道路において転倒事故をおこし、対向車線上に飛び出し横臥していた過失が認められ、右道路上に人体が横臥していることは走行車両にとつて通常予測しがたいことであるから、この康治の過失も又本件事故の発生原因をなすとともにその程度は相当重いものであるといわざるをえない。

従つて、右康治の過失を前記被告の過失と対比すると、前記認定の損害額から五割を減ずるのが相当であるから、原告らが被告に請求できる金額は、各一〇七五万八五八九円となる。

五  損害の填補

被告から康治の治療費として三七万三二五五円、及び自賠責保険から一七五〇万円の合計一七八七万三二五五円が原告らに対し支払われたことは当事者間に争いがないから、原告らの前記損害合計額各一〇七五万八五八九円から右填補額各八九三万六六二七円をそれぞれ差し引くと、原告らの残損害額は各一八二万一九六二円となる。

六  弁護士費用

弁論の全趣旨によれば、原告らが本訴の提起及び追行を弁護士である原告ら訴訟代理人に委任し、その費用及び報酬の支払いを約していることが認められるところ、本件事案の内容、審理の経過、認容額等に照らすと、原告らが被告に対して、本件事故と相当因果関係にある損害として賠償を求めうる弁護士費用は各一八万円と認めるのが相当である。

七  結論

以上のとおりであるから、原告らの被告に対する本訴各請求は、前記各一八二万一九六二円に弁護士費用各一八万円を加えた合計金額各二〇〇万一九六二円、及び右各金員に対する本件事故の発生の日である平成元年五月三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 阿部靜枝)

別紙図面

<省略>

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